創るcollaboration 第ニ回コラボレーション企画
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めぐり逢いましょう

佐野 浩子


「おばあちゃま!!」
 息を弾ませ、ミーナが祖母の元へ。
 ミーナの傍(かたわ)らには、ミーナがユイと名付けたユニコーンが嬉しそうにミーナを見守っている、いつも。
「おばあちゃま、来て!!」
 十才のミーナは、有無を言わさぬ速さで祖母の手を引き、屋敷の奥の納戸へと祖母を連れて行ったのだった。

 ミーナは祖母を、納戸の中に仕舞われていた一枚の絵の前に誘(いざな)う。
 そして、その絵を指差し、祖母に聞いた。
「ねえ、コレ、ミーナとユイ?」
 何十年も前に描かれたであろう年季の入った絵の中には、少女と、その少女に寄り添う一匹のユニコーンがいた。
 確かにその面影は、ミーナとユイに見えた。
「ああ……」
 感嘆の吐息が祖母の口から漏れた。
 愛(いつく)しむように絵の中のユニコーンを撫でながら、祖母が言ったのだった。
「アオよ。私と、アオ」
 ミーナは、キョトンとした顔で祖母を見つめていた。
 そんな孫の様子に気付いた祖母は、可笑しそうに戯(おど)けながらミーナに言う。
「おばあちゃまも、昔は少女だったのよ」
 ミーナが不思議そうに祖母の顔を見、言う。
「おばあちゃま、ミーナにそっくり似ていたの?」
 祖母はミーナの言い方が可愛らしくて、吹き出しそうになった。
 ミーナは、なおも興味深そうに尋ねる。
「おばあちゃまも、ユニコーンの友達がいたの?」
 祖母は満面の笑顔でミーナに答えた。
「ええ、ええ、おばあちゃまにも、アオと言う名前のユニコーンの友達がいたのよ。そうそう、それから、ミーナのママにもね……」
 祖母の話に、ミーナの瞳がキラキラ輝き、ミーナに寄り添うユニコーンのユイは優しくミーナに顔を寄せ、自分の頬でミーナの頬を撫でるのだった。
 ユイのしっぽがパタパタ揺れている。
 祖母はそれらに、かつて自分の傍にいつも優しく寄り添っていたアオの姿を思い浮かべていた。
 祖母は無邪気な孫にキスをし、そっとユイの鼻先を撫でたのだった。

『女の子が生まれると、ユニコーンはその女の子を守るために現われるの。ええ、どの女の子にもね。ユニコーンは女の子の成長をいつも傍らにいて見守ってくれるの。
 大切な宝物のように守ってくれるの。
 どこへ行くのも一緒。一番の友達。
 でもね。
 ある時、女の子は恋をしてしまうの、誰かに。
 やがて女の子は、誰かを愛する女の人に変わる時が来てしまうの。
 そうすると、いつの間にかユニコーンはいなくなって、女の人の傍らには、愛する誰かが寄り添うの』

「おばあちゃま、ミーナ、ユイが大好き! いつも一緒よ。仲良しなの」
 ミーナは祖母にそう言うとユイの角に触れ、鼻先にキスをし、今度はユイに囁いた。
「ずーっと、ずーーっと一緒よ」

 祖母は、愛らしいミーナ達の姿に微笑みながらも、自分がかつてそうであったように、やがて別れの日がやって来る事を思った。が、まだあどけない笑顔の幸せそうな今のミーナには、その未来を、今伝える必要は無いのだと思えた。
『ミーナ、いつかは思い出の中のユイになってしまうの、あなたに愛する人が現れた時にね。だから今を、ユイとの時間を、思う存分楽しんでね』

 役目を終えたユニコーンは、次の守るべき女の子の元へ向かうのだ。
 そしてまた、ユニコーンは少女の傍らに。





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