創るcollaboration 第ニ回コラボレーション企画
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マリリンの秘密の友達

西村 万里子


「キャー。痛い! マリリンやめて」
 六年一組の教室に、メグの可愛い叫び声が響いた。
「フン。変な髪飾り。そんなの、ぜーんぜん、似合ってないよ」
 母親に付けてもらったに違いない、メグの頭の髪飾り。マリリンは羨ましくて、取ってやろうと髪ごと引っ張った。
(私だって、ママにあんなのを付けてもらいたい)
 ママは昨夜もパーティーで、帰ったのはマリリンが寝てから。半年前パパが海外勤務になってから、ママはマリリンを構ってくれなくなった。

 マリリンは学校から帰ると、ばあやが用意してくれたおやつも食べず、自分の部屋へ入き、いつものように机の上の額に話しかけた。
 額の中にはパパのプレゼント、ユニコーンの絵が入っている。ユニコーンに、語呂合わせみたいな『シスコーン』という名前を付け、その日の出来事を話すのが日課だ。
「ねえ、シスコーン。明日学校へ行きたくないの。だって、誰も遊んでくれないもの。マリリンの友達はお前だけだよ」
 と机の上に顔を伏せた。

 いつの間にか、マリリンは夢の中へ。
「マリリン、マリリン」
 遠くで誰かが呼ぶ声がする。
(だれ?)
 よく見ると、それは額にいるはずのシスコーン。
「シスコーン。お前なの?」
「そうだよ、マリリン」
「何で、お前がここにいるの? 額の中に入ってなきゃだめじゃない」
「マリリンが寂しそうだから、額から抜け出してきたんだ。マリリン、僕と遊ぼうよ」
「ホント? 私と遊んでくれるの? 嬉しい。私、鬼ごっこがしたいな」
「いいよ。じゃあ、僕が鬼になるね」
 二人は、鬼ごっこをして遊び、マリリンは久しぶりに楽しかった。
「ねえ、マリリン。さっき学校へ行きたくないって言ってたよね。どうしてなの?」
「友達がいないから、行ってもつまんないの」
「どうして、友達がいないの?」
「私が意地悪するから」
「じゃあ、意地悪するのやめたら」
「分かってるけど……」
「マリリンは、本当はとてもいい子だよ。僕マリリンが大好きだよ」
「私のことが好きって……ホント?」
「ほんとだよ」
「でも、ママはきっと私が嫌いなのよ」
「そんなことないよ。ママはパパがいなくて寂しいんだよ。だから今は、マリリンの事を思う余裕がないだけだよ。本当はママも友達も、マリリンが好きなんだよ」
 マリリンは目が覚めた。
(夢か……)
 がっかりしたが、何だかさっきより優しい気持ちになっていた。
(明日学校へ行ってみようかな。友達と仲良くできそう)

 次の日の朝、マリリンは教室に入った。
「おはよーメグちゃん。素敵な髪飾りだね」
 慌てて髪を押えるメグ。次は俊太の所へ。
「おはよー俊太」
 内股歩きを“女の子みたい”とからかわれる俊太は、慌てて蟹股に。マリリンは俊太をからかわず、自分の机へ向かった。キョトンとするメグと俊太。
「マリリン。今日はいつもと違うね」
「そう?」
 昼休みの校庭には、マリリンが友達と鬼ごっこをして遊ぶ姿があった。
 友達と仲直りでき嬉しいマリリンは、スキップしながら家へ。するとパパから手紙が届いていた。
『来週、日本に帰ることになったよ』
(ヤッター。パパが帰って来る!)
 マリリンにはそれが、シスコーンからのプレゼントのような気がして
「ありがとう」
 お礼を言うと、額の中のシスコーンがウインクした。





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