創るcollaboration 第ニ回コラボレーション企画
028
021

うわさの4姉妹

児玉 美津江


 今日もパパの背中に乗って、大空を駆け巡って遊んでいた。
 パパの背中はスッゴ―ク気持ちいい。
 私達4姉妹は一番前のポジションを取り合っていつも大喧嘩なの。だってパパの立髪が風になびいて頬にあたってもう“最高!”
 パパは、ユニコーン王国の王さま。
 あっ、そうそう、あたし達、4姉妹の紹介をするわね。

*長女アニイ(18)長―い髪を三つ編みにして何時も物想いに耽っているロマンチスト。
*次女キャロル(17)コト私。皆がおませでとんでるって云うの。赤毛がお気に入り。
*3女ベティ(16)とっても甘えん坊だがセンス抜群。ピンクの肌にブルーの髪が素敵。
*4女ローリィ(15)臆病で泣き虫。何時もアニィの陰に隠れ、くっついているの。

 或る日、いつものようにパパの背中に乗って遊んでいたら突然雷が鳴って、物凄い勢いで私達は吹き飛ばされたの。 雲の間をぬって地上に落とされたようだわ。
『ここは何処なんだろう?』
 とても賑やかな所で人が沢山いる。若い子がコスプレを各々(おのおの)身につけている。
「アッ! “アキハバラだ”」
 ユニコーンの王国にいても、人間界の情報は入ってくるのよ。
 私達の周りに人垣が出来た。
 白いらせん状の小さな角(つの)がある私達をみて
「雷の子じゃあねえの?」と誰かが言った。
 丁度そこをAKB48のマネージャの秋山が通り掛り人垣をおしのけて割り込んできた。
「君達何してんの? 早くこっちに来なさい」秋山は咄嗟に知り合いのふりをして言った。
「みんなゴメンよ、ビックリさせちゃって」
 軽く頭を下げて、秋山は私達を取り囲む人達に謝った。
 AKBの秋山をこの界隈で知らない者はない。
「なんだよぉ~、秋山さんの知り合いかよ~」
「ねぇ、秋山さん、今度はどんな事、考えてんだよ」
 秋山に軽口を叩いて、人々はまた人波の中に紛れて行った。
「ふぅ~ん」
 と言ったきり、秋山は私達4人をじっと見つめた。
「決まりだ!」
 このひと言だけで、私達の進む道が開かれた。
 それから間もなく私達は『プティ4(フォー)』と名付けられデビューした。秋山の思惑(おもわく)は当たりAKB48を遥にしのぐ人気がでた。
 秋山は私達4人の素性をアレコレと詮索しない。だって私達は人間と違い小柄ながらお尻はプルプル。若者だけじゃなく世の叔父さま方まで虜(とりこ)にしたのだから、秋山にとっては、それでいいのだ。
 “フン!”AKB48なんか目じゃないわ。
 そのうち『あれは人間ではないのではなかろうか』と噂がたちはじめた。
 私とベティは、ルンルン気分だったが、アニィとローリィは家に帰りたいとよく泣いた。

 或る晩、私達が寝静まった頃、若い男が部屋に侵入して私達の角を力いっぱい曳いた。
「イ、痛い、痛いわよ」
「やっぱり雷の子だ」男は囃し立てる。
その時、白い立髪をなびかせパパが現れた。
「パパ―!」
 私達はしがみついて泣いた。
「早く乗りなさい」
 私は、ずっと我慢していたローリィとアニィを前に乗せ、次にベティそして最後に私が乗り、パパは大空に向って駆けだした。
『もう、そろそろ潮時かな……』と私は思った。





■ 第2回コンテンツに戻る ■



第一回CONTENTS
第二回CONTENTS
第三回CONTENTS
第四回CONTENTS
第五回CONTENTS