創るcollaboration 第三回コラボレーション企画
11
011

おかげで主婦が出来てます、ハイ

佐野 浩子


 今から四十年ほど前、私が小学生の頃に、話は遡(さかのぼ)るのだが。

 使い方の説明をするTVコマーシャルの中で、初めて私は電子レンジを知ったのだった。
 すごい調理器が現れたなと、子供でも関心を持ったことを覚えている。

 それからほどなくのある日、晩の食材を買いに、買い物カゴを持って市場へ出掛けた母が、電子レンジのデモンストレーションをしている所に出くわしてしまったらしい。
 今もだが、昔からうちの母は、すぐその気に成ってしまう人である。
「今ならレンジ用の鍋も付けてくれるって」と、上機嫌で食材と一緒に電子レンジの月賦三十万円の契約書を持って帰宅した母である。

 当時、サラリーマンの平均月収は十五万円。
 高価な家電であったのだと思う。
 今の電子レンジと比べると、出始めのソレは、温めるだけの機能しかなく、かなり大きくて、大変重いものだった。

 数日後、我が家へ来た電子レンジは、まだ普及していない新製品らしく、レンジで作る料理のハウツーレシピ集が附属されていた。
 それを参考に私と母はいろいろ作ってみた。
 中でもよく覚えているのはクッキーで、レンジのレシピ通りに作ったソレは、歯が折れるかと思ったほど石のように固かった。
 今なら絶対しないが、生玉子を入れ、爆発という大惨事も経験いたした私であった。

 しかし僅(わず)か四十年ほどの間に、電子レンジは、ものすごく進化をしているなと思う。
 現在五十一才に成った今の私には、なくてはならぬ家電第一位の電子レンジである。
 六人家族の我が家の食事時間はバラバラで、朝昼晩、家族のごはんはちゃんと作る私だが、すぐに食べない家族の分は、ラップし、テーブルに置いておくという方法をとっている。
 すぐ食べない人は、〝チン〟して食べる。
 中二の息子と夫に毎朝弁当を作っているが、火入れ時間のかかる食材も、チンすると短時間で出来、レパートリーも増える。それに、うっかり寝坊した日も、冷蔵庫からチンして詰めるだけの食品で乗り切れているからありがたい。
 そう、私、電子レンジが無けりゃ、きっと、この食事時間のバラバラな家族達のごはん作りに、朝から晩まで立ちっぱなしの人生を過ごしていたか、もしくは、作るのを放棄していたかもしれんわな……。

 電子レンジは私の救世主ですな。
 家族の体を思い、バランスの良い手作りの食事を心掛け、それを実行出来ているのは、電子レンジのおかげなのである。

 ちなみに電子レンジでチンの〝チン〟と言う由来は、昔の電子レンジの出来上がりのタイマーの音が〝チン〟という音だったためである。
 温故知新。





■ 第3回コンテンツに戻る ■



第一回CONTENTS
第二回CONTENTS
第三回CONTENTS
第四回CONTENTS
第五回CONTENTS