創るcollaboration
島村 綾

島村 綾
1976年生まれ

008

《手紙形式》

娯楽の筋トレ

 私は松尾成美(まつお なるみ)さんの文章教室に通って、今年で七年目になります。
 子供の頃から漫画家になりたいと思っていました。ですが何度か漫画雑誌に投稿しても全く通りませんでした。
 三十一歳の時、絵以上に四苦八苦した物語の書き方をきちんと学んでみたいと思い、当時新しく出来た教室に入りました。
 松尾先生の教室に通う我々受講生は、毎月先生からテーマを貰います。それは、
『駐車場を舞台にしたフィクション』や、『一年後の自分へ向けたエッセイ』など。月に一度、様ざまな題材で自由に、原稿用紙三枚分の文章を書きます。
 授業では毎回新しい事を発見します。
 私はホラーやオカルトや宇宙などの不思議なものが大好きですが、他の受講生のみんなは、それほど興味が無いと知った時はびっくりしました。
 みんなが同じテーマで書くので、似た内容の作品が出来上がってくるだろうと思っていたのに、そんなことはただの一度も無かったのも、私には驚きでした
 一番身に染みて感じたのは、短い作品でも『仕上げる』ことがいかに重要かということです。どんなに出来が悪くてもそれを完成させて発表すると、そこから発展があると知りました。
 恥ずかしいから、と思って内に留めておくと、恥はかかなくても前に進むきっかけが得られません。

 十代の頃は、いい作品というのは突然天からアイデアが降ってくるものと考えていました。
 しかし、これまで先生や他の受講生から面白いと言ってもらえた作品は、普段から思っていることだったり、パソコンのキーを叩き続けているうちになんとなく出たことだったり、全て『続けてやる』ことの先に出たものばかりでした。
 物を創りたいという動機は、自然に湧き上って来ますが、完結させるには、勢いや時間、自分を追い立てる理由が必要だということもわかりました。
 松尾先生の教室では、毎月他の受講生の前で、自分の作品を自分で読みあげ、聞いてもらいます。こういった発表の場があり、それに合わせて作品を創れることがとても恵まれているということも、最近になってわかりました。

 私たちの創作活動は、農家や大工さんのような、生活に必ず必要な仕事ではないです。
 子供の頃、書く・描くという創作活動が、職業として成り立つのかと真剣に悩んでいたことがありました。でも、私は漫画やゲームをお金を払って買います。発売を待ち遠しく感じています。そんな人は大勢います。
 生きる為に、肉体ではなく精神が欲する栄養が、芸術やエンターテイメントなどのジャンルなのだと今は思います。

「文も絵も音楽も、大昔から存在した表現で、もう表現方法も出尽くしているのでは?」
 とも思っていましたが、今はそれでもいいんだと考えています。新しいものを見たい時もあれば、予定調和の展開で心を落ち着けたい時もありますから。

 いくつかの文章の賞に応募して、一度賞金をもらっただけの私は、この道を職業にするには時間がかかりそうですが、楽しく続けられる道を見つけられたことは幸せです。
 皆さんも好きで楽しいことは、手放さずにいてください。





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