創るcollaboration 第ニ回コラボレーション企画
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はじめてのお使い

野田 時々


 ホイテとルルはユニコーンの兄妹だ。ホイテはお母さんから頼まれごとがあった。家の隣のイチョウの木の洞(うろ)の中にある、赤いカバンをお母さんの勤めている神様の庭まで届けて欲しいとのことだった。
 一年に一回、神様の庭でお祭りがある。子供たちは一列に空に向かって踊るのは楽しかった。普段は夜遅く起きていると叱られたが、お祭りの晩だけは特別に許された。
 それは輝いて楽しいところだった。帰りたくないと言ってはお母さんを困らせたものだ。

「あの神様のところへ行けるんだ」と思うと、うれしくて、さっそく出かけることにした。
 ルルも一緒に行きたいというので、連れだって、出かけた。ホイテは6歳、ルルは4歳だ。

 家を出て、少し行くと、草原に出る。風が通り、とても気持ちがいい。
「キャー」とホイテの後ろで悲鳴がした。
 ルルがいない。見てみるとルルが穴に落ちていた。
「ルル、大丈夫?」と、ホイテは穴の中に向かって叫んだ。ルルの泣き声が聞こえた。そのときホイテはこの穴はホイテたちが掘った落とし穴だったことに気が付いた。お母さんに
「危ないから、そんないたずらをしてはいけません」と、言われていた。
「ごめんよ」と、ルルを助け上げた。さいわいルルは足を擦りむいたくらいで、大丈夫だった。

 道が三つに分かれていた。
 右だったかな?
 左だったかな?
 それとも真ん中だったかな?
 解らなくなってしまい、少し泣きべそになりかけた。そのとき通りかかったムクドリが「神様の庭なら、真ん中を行けばいい」と、教えてくれた。
 焦ったホイテは、三叉路の木の根っこに足を引っかけ、前足をくじいてしまった。それでも妹の手前、威厳を見せ、頑張って歩いた。
「足が痛いのにすごいね、お兄ちゃん」と、ルルにきらきら光る眼を向けられ、照れた。

 次は細い川が道を塞いでいた。
 ホイテは簡単に飛び越えた。だがルルは川に落ちて流されてしまった。半狂乱になったホイテは、足の痛いのも忘れて、探し回った。幸いルルは水草にひっかかっていた。ルル水から引き揚げ、体を拭いてやった。
「お兄ちゃんありがとう。お腹すいた」と、ルルは言った。
 ホイテは首にぶら下げていた赤いカバンとお弁当の入った荷物を下ろした。
「うん、お昼にしよう」柔らかそうな新芽のお弁当で、朝お母さんが作ってくれたものだ。お弁当を食べギャロップで神様の庭を目指した。
 2時に届けないといけないと言われたのを思い出したホイテは焦った。神様の庭に入るには7色に輝く虹の橋を渡らなくてはいけない。虹は1時に空に架かる。
 お昼をゆっくりしていたから、すでに虹が架かりかけていた。間に合わなければどうなってしまうのだろうか。ともかくも走った。走った。
 ホイテは足が痛かったし、ルルが疲れたと泣き出した。なだめすかして虹の橋の近くまで来た。ところが近づいたと思ったら、虹の橋は遠くに行く。逃げ橋だ。
「お願い、もう悪いことはしません。落とし穴を作りません。妹を大事にします。お母さんのいいつけはきちんと守ります。虹さん逃げないで」ホイテは一生懸命念じた。
 虹の橋が近寄ってきた。さっとホイテとルルは虹の橋に乗っかり、お母さんに赤いカバンを届けることができた。
「よく頑張ったね、ホイテもルルも」と、お母さんが両手を広げて二人を抱きしめた。
「ぐにゅ、ふにゃ」と、意味の解らない言葉を発して、ホイテとルルは大声で泣きながらお母さんにむしゃぶりついた。





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