創るcollaboration 第三回コラボレーション企画


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我が家の次世代温水器

橋本 都紀子


 我が家では、夫が電力関係に勤めていたので、どこよりも、誰よりも率先して電気温水器を導入していた。
 二十年余り前の温水器は電気で温めたお湯を大型タンクにためておくのだが、結構かさばり見栄えも余り良くなかった。機能もまだ試作段階で不便なことも多く人気はなかった。

 ある年末のことであった。
 その年は格別寒さが厳しく、朝から小雪の舞い散る日であった。私は重箱におせち料理を詰め終えて、最後の洗い物をやっと片づけ、ようやくテレビの紅白歌合戦を見る事が出来たが、ついウトウトしてしまった。
「お母さん、早くお風呂に入ったら」と言う娘の声にびっくりして、慌ててお風呂に入った。
「キャー冷たい」
 思わず大声を出した。なんと蛇口から出てきたのはほぼ水に近いお湯であった。追い炊きをしようと思いスイッチを押した。半分ほどしか残っていない冷めたお湯は、益々ぬるくなっていった。何と追い炊きも駄目で、どうしようもない。眠さもいっぺんに吹き飛び、震えながらさっと洗い、慌てて上がった。
「もうーひどい目にあったわ。お風呂が故障して大変やったのよー風邪ひかないかなあー」と、急いで炬燵に潜り込んだのであった。
 そう言えば、今日は朝からお湯をひっきりなしに使っていた。タンクのお湯が空になっていたのだ。タンクの水がお湯になるには、一晩かかるらしい。故障ではなかった。

 それから暫くして、新しい機能の温水器が出来、そんな心配もなくなった。きっと、私以外にも同じ体験をした人はいるに違いない。
 我が家の今の温水器は三台目である。十年程前に買い替えたが、未だに故障もなく、順調である。簡単で、環境にやさしく、省エネでキュートな次世代温水器であるらしく、便利な充実機能が満載されているようだ。
 以前のように、お湯ぎれの心配もなく、お任せ湯量調節、自動運転などもあって、お湯はりのスイッチを入れてから五時間は、湯量も温度も設定時を保っている。
 スイッチを入れて暫くすると、明るい声で
「もうすぐお風呂が沸きます」
 そして、五分ほどすると、
「お風呂が沸きました」と、知らせてくれる。
 少々お節介のような気もするが、最近の家電は声や音楽が好きらしい。

 先日大きな雷が近くに落ちて、二時間半も私の付近が停電になった。今の日本は家電社会といっても過言ではないだろう。オール電化の我が家では、より電気の有難さを感じた一時であった。

 ようやく朝夕涼しくなると、寒がりの野良猫が、ちゃっかり温水器の上で寝ている。
 猫も電気が好きらしい。





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