創るcollaboration
西森 郁代

西森 郁代
1951年生まれ

009

《手紙形式》

明日輝くために

 大阪デザイナー専門学校の皆さんへ。

 初めてお便りをさしあげます。
 62歳の私が、若い方々に手紙を書くって、なんて楽しい事なんでしょう。今、パソコンに向かいワクワクしています。
 長い手紙になりそうです。最後までおつきあいして下さいね。

 さて、私は文章を書くようになって10年になります。書くようになったきっかけや、今どんな事を思っているのかを話します。聞いて下さいね
 そうそうその前に、私の事を知って頂くために自己紹介をします。
 私は62歳、65歳のつれあいと奈良県で二人暮らしをしています。大阪で暮らしている一人娘は27歳、3月に結婚します。
 私は高校卒業後、一年間大手出版会社に勤めた後、もっとやり甲斐のある仕事がしたいと保育士に転職しました。そして31年間公立保育所で勤務し、50歳で退職しました。退職後は、老人ホームで老人の方と遊ぶボランティア活動やウォーキングを楽しんでいます。

 それじゃ、文を書くようになったきっかけをお話ししますね。
 そう、24、25歳の頃だったかしら……。
 保育士になったものの、仕事の厳しさや難しさに直面したり、女性だけの職場の人間関係にも悩んでいたの。と同時に結婚したばかりで、夫の両親と同居という新生活の環境にも疲れていました。
 そんな時、『話を聞いて聞いて』と思いをぶつけるように、31文字【みそひともじ】の短歌を詠んでいたの。そうして、あふれる思いを昇華していました。それでも、私の気持ちは31文字では言い切れなかったのよ。だから私は、もっと話したい気持ちを伝えるために、退職後、文章を書くようになりました。

 学生の皆さんはこんな時、どうしているのかしら?
 友達に話すの?
 それとも親御さんかしら?
 相手が誰であっても、話しても話しても、物足りないという経験は皆さんもあるでしょう。
 私は今、その頃を振り返ると、『聞いて聞いて』という気持ちを、読む人だけに向けていたように思います。
 でも今は違うのよ。私は私の心に向かい聞いています。自分に『どう思うの? 何が好きで、どんなことが厭なの?』というように……。
 そして文を書く事は、『自分の心を見つめ、かえりみる事』だと気がついたの。もし書く事がなかったら、こんな事解らなかったかもしれません。
 学生の皆さん、偉そうな事を言ってごめんなさいね。
 そうは言うものの、私はまだまだ未熟で、勉強中です。自分を見つめるって難しいものね。

 イラストと文章、方法は違うけれど、自分の気持ちを表現する事は同じではないかしら。
 皆さんにも、描きたくない時も、描けない時もあるでしょう。でも、自分には『描く』という、 "思いを表現する方法がある" という事を忘れないでほしいの。その事が、あなた方のこれからの人生で困難にあった時、きっと慰め、励まし、力をくれる事でしょう。
 皆さんの明日は輝いています。
 それを信じています。
 長い手紙を読んで頂いて有難う。
 いつかお会い出来る日を楽しみにしています。
 さようなら。





■ 第4回コンテンツに戻る ■



第一回CONTENTS
第二回CONTENTS
第三回CONTENTS
第四回CONTENTS
第五回CONTENTS